院長の臨床研究が、平成29年3月1日発行のJournal of Sleep Research (J Sleep Res.(2017)26.247-250)に論文掲載されました。

【表紙】

掲載論文
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 このジャーナルは、ヨーロッパ睡眠学会の学術誌です。この研究成果は、睡眠リズムに関する大脳生理学的発見、気分障害(うつ病や躁うつ病)のリズム治療の有効性と薬理学的作用機序、気分障害の遺伝子操作動物モデルの利用などへの転換の契機になるものと考えられます。論文はインターネットで世界中のどなたでも無料で閲覧可能な状態となっております。

 この成果を簡潔にまとめますと以下のようになります。



 地球上の生物の大半は、生体時計によって朝と夜で活動を切り替える活動リズムを持っています。この切り替えを基準に、睡眠活動リズム、種々の遺伝子発現、ホルモン分泌、自律神経活動、臓器活動などの最適なタイミングでの活動がセッティングされており、健康な生体機能が保たれています。これまでに、体内時計の異常で、時差ボケ、うつ病や内臓の種々の病気が引き起こされることが分かっています。この体内時計には、ネズミやハムスターでは朝と夕の体内時計の発信器(振動体)が脳の視交叉上核にあることが確認されていますが、ヒトでは約半世紀の間それらの存在がわかりませんでした。今回、躁うつ病の臨床研究の中で、睡眠が夕の部分と朝の部分に分かれてそれぞれが別の動きをすることから、ヒトにも朝と夕の発信器があることが確認されました。
 更に、この朝夕の発信器の不調和(脱同期)でうつ病が起こったこと、この不調和を改善(同期)することでうつ病が治り、躁うつ病が長期間予防されたことを報告しました。
 この不調和の改善療法には、光治療、社会リズム療法、時間治療、断眠療法、薬物療法などがありますが、今後は遺伝子操作で作成された2つの発信器の不調を持つネズミをつかった新たな抗うつ薬などの治療法の開発につながると期待されます。